生成AIの「導入」は、多くの企業で一巡しました。Microsoft 365 CopilotやChatGPTといった主要ツールはすでに広く行き渡り、問いは「入れたか」から「成果を出せているか」へ移っています。
ネオス株式会社は2026年7月、全国の就業者500名を対象に、生成AIの活用状況と、その成否を左右する社内ナレッジの整備状況を28問で調査し、結果を「企業AI白書2026」としてまとめました。
調査からは、用途別に「活用が定着」しているのは9用途平均で8.5%にとどまること、43.2%が情報を探すのに1日1時間以上を費やしていることなど、導入と成果の間にある溝が数字として見えてきました。
この記事は全3回の連載の第1回です。今回は調査の全体像と主要な数字を紹介し、第2回で「なぜ定着しないのか」、第3回で「どう越えるのか」を解説します。
この記事の要点
- 企業AI白書2026は、ネオス株式会社が全国の就業者500名に実施した生成AI活用の実態調査(2026年7月、全28問)
- 用途別の「活用が定着」は9用途平均8.5%。43.2%が情報探索に1日1時間以上、62.2%がノウハウを言語化できていない
- 白書は、導入と成果の間にある溝を「5つの壁」として整理し、その解として「組織知活用AI」を提示している
企業AI白書2026とは|就業者500名に「生成AIを使えているか」を聞いた
企業AI白書2026は、「導入したか」ではなく「使えているか」を問うことを目的に設計した調査です。導入率ではなく、用途別の定着度、社内ナレッジの整備状況、社外AIの利用実態、ROIの確認状況といった「導入の先」を数字で捉えています。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 調査名 | 企業AI活用実態調査 |
| 調査主体 | ネオス株式会社 |
| 調査方法 | インターネットリサーチ |
| 調査対象 | 全国の就業者(20代〜60代以上) |
| 実施期間 | 2026年7月 |
| 有効サンプル数 | 500名 |
| 設問数 | 全28問 |
回答者の職業は、会社員(事務系)35.4%、会社員(技術系)25.2%、会社員(その他)21.4%、公務員7.8%、経営者・役員4.0%(上位5区分)で、年代は20代〜60代以上にほぼ均等に分布しています。8割超が会社員・公務員であり、本調査の数字は、現場の就業者が自身の職場をどう見ているかを表すものとしてお読みください。
調査で分かった5つの数字【一覧】
調査結果のなかから、生成AI活用の実態を端的に示す5つの数字を紹介します。
1. 用途別の「活用が定着」は9用途平均8.5%(Q3、n=500)
資料作成、情報検索・ナレッジ、開発、暗黙知の継承など9つの用途で「活用が定着している」と答えた割合の平均です。導入率はMicrosoft 365 Copilot 39.4%、国内ベンダー系30.4%、ChatGPT Business/Enterprise 28.2%と高く(Q2、n=500、複数回答)、導入は広がっているのに定着しないというギャップが本調査の出発点です。
2. 43.2%が情報を探すのに1日1時間以上(Q10、n=500)
加重平均すると1日約1.38時間、年間240日換算で約330時間が「探す」ことに費やされている計算です。
3. 62.2%が業務ノウハウを言語化・共有できていない(Q14、n=500)
「一部のみ言語化」37.0%と「ほとんど個人の頭の中(属人化)」25.2%の合算です。「ほぼ言語化・共有されている」は13.8%にとどまります。
4. 58.6%が業務で社外の生成AIを使った経験がある(Q25、n=500)
会社が用意した仕組みの外で使われており、入力した情報の首位は「社内資料」45.7%でした(Q26、n=293、複数回答)。
5. ROIを明確に確認できているのは11.8%(Q28、n=346=生成AI利用者)
「部分的に確認できている」41.0%を含めても、約半数は効果を経営判断に使える形で把握できていません。

5つの数字に共通するのは、「AIツールの性能」ではなく「社内の知識をAIに渡せる状態になっているか」が成否を分けている、という点です。
白書が示す「5つの壁」と「組織知活用AI」
なぜ導入しても定着しないのか。白書は、その構造を「形式知・暗黙知・再現性・ガバナンス・ROI」の5つの壁として整理しています。資料が探せないから判断基準が言語化されず、参照できる社内情報がないから成果が個人に依存し、社内のAIが答えられないから社外AIへ迂回し、効果が測れないから投資が止まる——5つの壁は連鎖しており、白書はこの連鎖を「企業のAI格差」の正体と位置づけています。第2回では、5つの壁を設問ごとの分布とともに1つずつ解説します。
では、その壁をどう越えるのか。白書が解として示すのが「組織知活用AI」です。社内の知識と判断基準をAIから参照できる形に整える土台を標準実装し、「何でもできる」ではなく「会社の正解を返す」ことに特化したAIで、導入は「棚卸し → 基盤化 → 全社展開」の順序で進めます。第3回では、汎用AI・自社開発AIとの違いと、導入の3ステップを解説します。
組織知活用AIの具体例としては、ネオス株式会社のOfficeAI社員®があります。社内資料を検索・参照して回答し、社内独自の用語や業務ルールを反映したうえで、内容が曖昧なときは必要な情報を聞き返し、回答文や文書のたたき台を作ります。
まとめ|「導入の先」を数字で捉える
企業AI白書2026が示したのは、日本企業の躓きが技術ではなく構造にあるという事実です。用途別の「活用が定着」は9用途平均8.5%、43.2%が情報探索に1日1時間以上、62.2%がノウハウ未言語化、58.6%が社外AIへ迂回、ROIを明確に確認できているのは11.8%。一方で、社内の知識を引き出せる仕組みがあれば週1時間以上を付加価値業務へ振り向けられると答えた就業者は54.8%(Q21、n=500)にのぼり、損失の裏側には同じ規模の回収余地があります。
次回・第2回は「なぜ導入しても定着しないのか」。5つの壁を、設問ごとの分布とともに1つずつ解説します。調査結果の全文は「企業AI白書2026」で無料公開していますので、社内での検討にお役立てください。






