「うちは機密情報を入力しないよう徹底しているから大丈夫」
そう考えている企業ほど、ChatGPTの情報漏洩リスクを見落としているかもしれません。
たしかに、機密情報の入力による漏洩は実際にあり、従業員への教育は欠かせません。ただし、対策が「ChatGPTへ機密情報を入力しないよう徹底すること」だけでは、必ず穴が残ります。設定もルールも、従業員一人ひとりが守って初めて機能するためです。
法人プランで解決する場面もありますが、それだけでは防ぎきれないケースもあります。
本記事では、ChatGPTで情報が漏れる仕組みと個人でできる対策を整理した上で、組織として情報漏洩を防ぐ現実的な対策を解説します。
目次
まず押さえておきたいChatGPTで情報が漏洩する仕組み
ChatGPTの情報漏洩は、使い方を誤ったときだけに起こるわけではありません。サービスの構造上、避けるのが難しいケースがあります。
前提として、入力したデータはChatGPTを運営しているOpenAI側へ渡り、利用者が自分で削除しても完全にはコントロールできない仕組みです。漏洩そのものではありませんが、2025年のニューヨーク・タイムズによる訴訟では、一般向けプランのログが保全の対象となりました(のちにこの保全命令は解除されています)。
つまり、入力した情報の取り扱いを利用者側だけで完全に把握・管理するのは難しいのが実情です。
その上で、情報が漏れる主な経路を3つに分けて解説します。
- 入力した情報が学習・再利用される
- アカウントが乗っ取られる
- 会話が外部に流出・露出する
1.入力した情報が学習・再利用される
一般ユーザー向けのプラン(無料版やPlus)では、AIへの指示に入力した内容が、モデルの学習・改善に使われる場合があります。機密情報や個人情報を入れてしまうと、他人の回答として情報が出力されるリスクが生じます。
過去には、Samsungの従業員がソースコードや会議情報をChatGPTに入力したことが問題視され、社内での利用を制限する事態に至った事例がありました。
(参考:https://forbesjapan.com/articles/detail/62905)
悪気があるかどうかは関係なく、便利だという理由だけで、機密情報が漏洩してしまう可能性があります。
2.アカウントが乗っ取られる
パスワードの使い回しやフィッシング、情報窃取マルウェアなどによって、認証情報が盗まれることがあります。アカウントが乗っ取られてしまえば、過去の会話履歴ごと第三者に見られてしまいます。
実際、盗まれたChatGPTアカウントがダークウェブ(特別なソフトウェアを使ってアクセスするインターネットの隠された領域)で売買された出来事がありました。
(参考:https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/00676/070900138/)
これはChatGPT側の脆弱性というより、利用者側の認証管理の弱さが情報漏洩の起点になった問題です。
3.会話が外部に流出・露出する
ChatGPT側の不具合により、ユーザー情報が他人に見られてしまう障害も過去に発生しました(2023年の表示バグなど)。
また、2025年には、OpenAIの外部委託先がサイバー攻撃を受け、一部の情報が外部に流出した事案が起きています。流出したのは、ユーザーの氏名・メールアドレス・おおよその位置情報・OSやブラウザの情報です。OpenAIは該当の委託先の利用を終了し、全ベンダーのセキュリティ審査を強化しています。
(参考:https://news.mynavi.jp/techplus/article/20251128-3730572/)
この他、ChatGPTの会話を共有するためのリンクが検索結果に表示されてしまい、会話の内容が第三者に閲覧された事例も報告されています。
(参考:https://forbesjapan.com/articles/detail/81919)
自分の操作にミスがなくても、サービス側の要因で会話が外に出てしまう経路がある点は、覚えておきたいところです。こうした個人の努力だけでは防ぎきれない漏洩経路があることを踏まえ、組織としての対策を先に知りたい方は「組織で情報漏洩を防ぐポイントは安全な専用環境」からご覧ください。
個人・現場でできる情報漏洩対策
ChatGPTの情報漏洩を防ぐためには、まず個人・現場のレベルで対策を講じることが鉄則です。
今や、ChatGPTの業務でも広く利用されるようになっており、社内での利用を禁止しても、自宅などで仕事に使わないよう徹底するのは簡単ではありません。
そのため、情報漏洩対策として下記4つを押さえておきましょう。
- 機密情報は入れない・ダミー化する
- 学習をオフにする(データコントロール)
- 法人プランやAPI版を使う
- アカウントのセキュリティを高める
1.機密情報は入れない・ダミー化する
最も基本的で、かつ即効性のある対策が、顧客名・個人情報・社外秘・認証情報といったデータをそのままAIへ渡さないことです。どうしても扱いたい場合は、仮名やダミー値に置き換えてから入力しましょう。
注意点は、機密情報の定義を個人の判断に委ねてしまうと、情報漏洩のリスクが残ることです。企業は機密だと考えている情報でも、従業員はAIに渡してもいい情報だと捉えているかもしれません。まずは、どのような情報が機密にあたるのか、もしくはAIへ入力してよい情報は何かを明確にする必要があります。
2.学習をオフにする(データコントロール)
ChatGPTの「AIへの指示に入力した内容が、モデルの学習・改善に使われる設定」は、任意でオフにできます。設定画面の「データコントロール」から、「すべての人のためにモデルを改善する」をオフにすることで、一般ユーザー向けプランでも入力した内容が学習に使われなくなります(2026年6月時点)。
あわせて「一時チャット機能」を使えば、チャット履歴を残さずに会話を進めることも可能です。
ただし、これらの設定はアカウントや端末ごとにおこなうものなので、企業が全社で足並みをそろえられるとは限りません。ルールとして定めても、実際に設定するかどうかは従業員に委ねられるため「設定を忘れていた」という理由で情報がAIモデルの学習・改善に使われ、他人の回答として出力される可能性があります。
3.法人プランやAPI版を使う
法人向けプラン(Business・Enterprise)やAPI経由では、入力した情報がモデルの学習に使われない仕様になっています。個人プランの利用より情報の扱いをコントロールしやすく、実際に多くの企業が導入している有効な情報漏洩対策です。
ただし、本格的に社内運用するとなると、コスト面での課題が出てきます。法人プランはユーザー数に応じた課金のため、利用人数が多いほど費用が積み上がっていきます。
- Business:3,050円/人(年払い。月払いは3,850円/人)
- Enterprise:個別見積り
(2026年6月時点。最新の料金は公式サイト参照)
APIも、従量課金のため「いくらかかるか」を事前に読みにくい点が課題です。加えて、APIはそのまま従業員が使えるものではなく、自前でツールに組み込む工数も発生します。
こうした点をふまえると、規模や運用体制によっては、用途に合わせて開発された専用の生成AIツールも選択肢のひとつです。
詳しくは「組織で情報漏洩を防ぐポイントは安全な専用環境」で解説します。
4.アカウントのセキュリティを高める
ログインまわりの対策を徹底することで、アカウントの乗っ取りによる情報漏洩リスクを大きく下げられます。
基本は、推測されにくいパスワードを使い、他のサービスと同じ文字列を使い回さないことです。パスワードに加え、SMS認証コードやスマートフォンの顔認証などをクリアしないとログインできないようにする「多要素認証(MFA)」を設定することも、不正ログイン対策として効果的です。
加えて、フィッシングメールや不審なログイン通知に注意が必要です。
フィッシングメールとは、実在する企業や公的機関を装って偽サイトへ誘導し、パスワードやクレジットカード番号などを盗み出す詐欺メールのことです。ChatGPTから送られたメールだと思い、記載されたリンクからログインすると、IDとパスワードが盗まれ、気付かぬうちに第三者にログインされてこれまでのやり取りの履歴が盗まれるという被害が起こり得ます。
パッと見ただけでは詐欺メールだと気付けないことも多いため、メール内のリンクから安易にログインせず、公式サイトやブックマークからアクセスすることが大切です。その上で、身に覚えのないログイン通知が来たら、すぐにパスワードを変更し、他端末で使っているChatGPTをサインアウトしましょう。
個人の対策だけでは防ぎきれないChatGPTの情報漏洩
ここまで挙げた対策は、どれも有効で、まず取り組むべきものばかりです。ただし、いずれも「個人が正しく運用すること」を前提にしています。組織全体で見ると、これらの対策には構造的に2つの限界があります。
- 運用が人の遵守に依存する
設定もガイドラインも、従業員が守って初めて機能します。「ルールが守られない」「私用アカウントが使われる」といった抜け道をゼロにするのは現実的ではありません。対策を講じても「人が守らなければ漏れる」という状態は残り続けます。 - 個人単位の対策では全社統制にならない
学習オフや個人プランの利用は使う人ごとの設定に委ねられるため、組織として「誰が・何を入れたか」を把握・制御するのは困難です。ヒヤリハットが起きても、検知も是正も難しくなります。
このような課題が残るからこそ、個別対策を積み上げるより「機密情報を扱いやすい安全な環境」を組織として用意する方が確実です。
次章では、組織で情報漏洩を防ぐ方法を紹介します。
組織で情報漏洩を防ぐポイントは安全な専用環境
情報漏洩対策は、一人ひとりの注意に頼るのではなく、企業が生成AIを安全に使える環境を用意することがポイントになります。方法は主に2つです。
- ChatGPTの法人プラン(Business・Enterprise)に加入する
- 専用の生成AIツールを導入する
1. ChatGPTの法人プラン(Business・Enterprise)に加入する
ChatGPTの法人プランは、情報漏洩対策として十分に有効で、まず検討したい選択肢です。入力が学習に使われず、データの暗号化や管理機能(SSOなど)も備わっており、実際に多くの企業が採用しています。
とはいえ、コストがかさむケースがあるのは課題です。ユーザー数ごとの課金のため、従業員が多い企業ほど、費用の負担が重くなります。
- Business:3,050円/人(年払い。月払いは3,850円/人)
- Enterprise:個別見積り
(2026年6月時点。最新の料金は公式サイト参照)
ユーザー数ごとの課金であるため、企業によっては「コストを抑えるため、一部の従業員にだけ配布する」という運用になることも考えられます。すると、例えば「アカウントを持たないアルバイトが、情報をそのまま個人のChatGPTに入力してクレーム対応文を作らせる」といった事態も起こりかねません。社内にとどめておくはずの情報が、結果として外部に漏れてしまう可能性があります。
そこで併せて視野に入れたいのが、ユーザー数に関係なく同一料金で使える専用ツールの導入です。
2.専用の生成AIツールを導入する
人数で費用が増えないツールであれば、コストを理由に配布を絞る必要がありません。全従業員へ同じ環境を行き渡らせやすくなります。
全員が同じ安全な環境を使えれば「一部だけ法人版・残りは個人版」というすき間も生まれにくく、情報漏洩のリスクを軽減できます。
OfficeAI社員®は、こうした全社統制の課題に応える専用ツールの一例です。
- 入力した情報はモデル学習に使われない
- Azureのセキュアな環境で利用できる
- IP制限・ベーシック認証・SSO・権限管理に対応=組織として統制できる
- 月額料金がユーザー数で変わらない(全従業員に安全な環境を配れる)
活用の幅も広く、社内の業務にあわせてさまざまな使い方ができます。例えば、社のマニュアルや規程・FAQを登録しておけば、社内の文脈に沿った問い合わせ対応や情報収集、簡単な資料作成に役立てられます。従業員が持つ暗黙知を集約させれば、組織全体で知識を使い回すことも可能です。
まずは無料トライアルから始めて、自社の業務に合うかどうかを確かめてみてはいかがでしょうか。
ChatGPTの情報漏洩は組織の環境整備で防ぐ
ChatGPTの情報漏洩は、入力ミスのような個人の問題だけでなく、サービスの仕組みや運用上の課題によっても起こります。機密情報を入れない、学習をオフにする、アカウントを守るといった対策はいずれも大切で、まず取り組むべきものです。
その上で、組織として情報漏洩を防ぐ鍵は、従業員の注意に頼ることではなく、安全に使える環境そのものを整えることにあります。
ユーザー数に左右されず全社へ展開できる専用ツールであれば、コストを理由に配布を絞る必要もありません。「誰もが同じ安全な環境を使う」状態をつくることが、漏洩経路を根本から減らす近道になります。
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