銀行業界で生成AIの導入が進んでいます。業務の効率化や生産性向上を目的に、多くの金融機関が活用を拡大し、文書作成の迅速化やデータ分析の高度化に取り組んでいます。
本記事では、銀行における生成AIの具体的な活用方法や成功事例、導入時の課題と対策をまとめました。導入のメリットや活用のポイントを知りたい方は、ぜひ最後までご覧ください。
目次
銀行で進む生成AIの導入
国内の銀行における生成AIの導入状況は、日本銀行が調査レポートを公開しています。
同調査によると、対象155金融機関のうち3割がすでに生成AIを導入しており、試行中を含めると6割に達しています。導入を検討している金融機関も含めると8割にのぼり、金融業界全体で生成AIの活用が広がっていることは明らかです。

生成AIで銀行業務を効率化する方法
生成AIには、文書作成の自動化や翻訳サポート、情報の要約機能など、業務の負担を軽減する多くの機能が実用化されています。ここからは、生成AIを活用して銀行業務を効率化する具体的な方法を紹介します。
- 文書要約を効率化して、業務負担を軽減する
- 校正・添削機能で正確な文書作成をサポートする
- 翻訳機能を活用して、国際業務を効率化する
- 資料作成時のミスを最小限に抑え、品質を安定させる
文書要約を効率化して、業務負担を軽減する
銀行業務では、大量の文書を処理する必要があり、情報整理に時間がかかるのが課題です。 生成AIの要約機能を活用すれば、重要な情報を短時間で抽出でき、業務効率が向上します。
- 会議の議事録を自動要約
- 融資案件に関する週次会議の議事録を要点を絞り、1〜2分で自動要約できる
- 長時間の議事録を読む手間を省き、忙しい行員でも迅速に情報を把握できる
- マーケットレポートの要点抽出
- マーケットレポートから「主要な経済指標」や「注目される業界動向」を自動で抽出できる
- 資産運用部門や法人営業部門の担当者は、市場動向を短時間で把握し、戦略的な意思決定を迅速におこなえる
- 顧客面談記録のサマリー化
- 融資担当者と顧客の面談記録から、融資条件や顧客ニーズを要点だけ抽出できる
- 融資担当者は、面談内容を簡潔に把握し、情報共有をスムーズに進められる
生成AIを活用することで、情報の整理・要約にかかる時間を削減し、業務効率の向上と意思決定の迅速化につなげられます。
校正・添削機能で正確な文書作成をサポートする
銀行業務では、融資稟議書や顧客向け案内文など、正確性が求められる文書が多く、わずかな誤りも許されません。生成AIの校正・添削機能を活用すれば、文書の品質を向上させ、業務の精度を高められます。
- 融資関連書類の正確性を強化
- 融資稟議書や与信判断資料などの誤字脱字や文法ミスを自動で検出できる
- 担当者は、生成AIの修正提案をもとに文書を見直し、正確性の高い書類を効率よく作成できる
- 顧客向け案内文の品質向上
- 金利変更やキャンペーン情報の案内文をチェックし、表現の一貫性や誤字脱字を修正できる
- 担当者は、表現の一貫性を保ち、正確な情報を載せた案内文を作成できる
生成AIの活用により、文書の精度を高め、業務の信頼性が向上します。
翻訳機能を活用して、国際業務を効率化する
グローバルな業務展開を進める銀行にとって、言語の壁を超えたスムーズなコミュニケーションは不可欠です。生成AIの翻訳機能を活用することで、業務の効率化と対応品質の向上が期待できます。
- 海外拠点とのコミュニケーション支援
- 海外支店や提携金融機関とのメールや文書を自動で翻訳できる
- 英語で送られてきたメールを日本語に翻訳し、返信内容も自動翻訳することで、担当者の業務負担を軽減できる
- 外国人顧客対応の円滑化
- 店舗での外国人顧客との会話をリアルタイムで翻訳できる
- 窓口担当者は、外国為替業務や口座開設の際にスムーズに対応できる
- 国際業務用資料の多言語対応
- 契約書やレポートのドラフトを自動翻訳できる
- 法務部門や国際事業部門の担当者は、翻訳コストや作業時間を削減できる
生成AIの翻訳機能を活用することで、業務の正確性とスピードを向上させ、グローバル対応を強化できます。
資料作成時のミスを最小限に抑え、品質を安定させる
銀行業務において、融資稟議書や業績レポートなどの資料作成は高い正確性が求められます。手作業によるミスを防ぎ、文書の品質を一定に保つために、生成AIの活用が有効です。
- 融資稟議書の品質安定
- 財務データや顧客情報をもとに、生成AIが稟議書のドラフトを自動で作成する
- 入力ミスやフォーマットのばらつきを防ぎ、稟議書の品質を一定に保てる
- レポート作成のミス防止
- 業績レポートやマーケット分析資料の入力データを生成AIが自動でチェックし、数値の整合性を確認する
- 人為的なミスや計算ミスを最小限に抑え、正確なレポートの作成をサポートする
生成AIの活用により、資料作成の正確性を高め、業務の効率化と品質向上を同時に実現できます。
| 【合わせて読みたい】 ・生成AIができる5つのこととは?業務に役立つ活用法と導入のポイントを徹底解説 |
生成AIの活用方法は、銀行ごとの業務内容や課題に応じて異なります。まずは、チェックリストを活用し、現状の課題を整理しながら自行に合った最適な活用法を見つけてみましょう。
成功事例に学ぶ!生成AIを活用した銀行の取り組み
すでに多くの金融機関が生成AIを導入し、業務の生産性向上を実現しています。融資審査の迅速化や社内問い合わせの自動化など、実際の活用事例をもとに、その効果と導入のポイントを解説します。
- 宮崎銀行|融資稟議書の作成時間を95%削減
- 七十七銀行|生成AIの活用で年間32,000時間の業務効率化
- 呉信用金庫|社内問い合わせの対応時間を約4,080時間削減
宮崎銀行|融資稟議書の作成時間を95%削減
宮崎銀行では、手作業で40分かかっていた融資稟議書の作成時間を、生成AIの活用により2〜3分に短縮。 作業時間を95%削減し、業務効率の飛躍的な向上を実現しました。
この効率化により、行員は対面での接客や新規顧客の開拓といった、より付加価値の高い業務に注力できる環境が整いました。
導入の背景
宮崎銀行は「リアル店舗を持ったデジタルバンク」を目指し、業務の効率化を推進しています。生成AIの導入は、業務時間を削減し、顧客対応の時間を増やすことを目的としており、特に地域住民との関係強化に力を入れています。
取り組み内容
- 銀行内の営業支援システムに蓄積された企業情報や業績データを活用し、稟議書を自動作成
- AIが融資判断材料となるデータを自動収集・整理し、行員の手入力の手間を大幅に削減
七十七銀行|生成AIの活用で年間32,000時間の業務効率化
七十七銀行では「Vision 2030」のDX推進の一環として、生成AIを活用した業務効率化を2025年3月より本格的に始動。 文書作成や情報収集、データ集計・分析業務など幅広い業務に導入し、本部の55業務以上に導入し、年間約32,000時間の業務効率化を見込んでいます。
この取り組みにより、行員がより戦略的な業務や付加価値の高い業務に注力できる環境を整備します。
導入の背景
七十七銀行は、DX戦略の柱としてデジタルテクノロジーの活用を推進。業務の効率化・高度化を進めることで、行員の業務負担を軽減し、より生産性の高い業務に集中できる環境を構築することを目指しています。
また、生成AIを行内情報や他の行内システムと連携させ、活用領域を段階的に拡大し、銀行業務全体の生産性向上を図る方針を掲げています。
取り組み内容
七十七銀行は、生成AIを文書作成や情報収集、データ集計・分析業務に活用し、以下の段階的な導入を計画しています。
- 生成AIの基本機能+データ分析
- 活用領域:企画・事務・データ分析
- 目的:生成AIの基盤を構築し、データ活用の効率化を進める
- 行内外情報の連携
- 活用領域:照会業務
- 目的:行内情報と外部データを結合し、迅速な情報検索を可能にする
- AIエージェントの導入
- 活用領域:営業店業務
- 目的:営業店業務にAIを活用し、接客や業務支援を強化する
また、生成AIの環境構築には「Microsoft Azure」を採用。クラウド環境の構築・保守運用を強みとする「NTT東日本」と連携し、高いセキュリティ水準を確保しつつ、安全かつ拡張性のあるAI環境を整備しています。
呉信用金庫|社内問い合わせの対応時間を約4,080時間削減
呉信用金庫では、預金業務や融資業務、人事関連の規定に関する問い合わせ対応を自動化するため、チャットボット「OfficeBot」を導入しました。 年間約20,000時間かかっていた問い合わせ対応時間を、約4,080時間削減する見込みです。
導入の背景
呉信用金庫では、イントラサイトに規程やマニュアルを配置し、文書検索機能を導入していました。しかし、営業店職員はどの規定を確認すればよいのかわからず、必要な情報を見つけるのに時間がかかるという課題があったのです。そのため、本部職員への電話問い合わせが減らず、年間約20,000時間もの対応時間が発生していました。
この課題を解決するため、同金庫はチャットボット「OfficeBot」を導入。規程やマニュアルに記載されている内容に関する問い合わせに、AIが自動で回答する仕組みを構築しました。
OfficeBotを選んだ理由
呉信用金庫が「OfficeBot」を選んだ理由は、簡単な運用でスモールスタートできる点や、高度な検索機能・セキュリティ面の安心感にあります。
- 簡単な運用でスモールスタートができる
データを登録するだけで運用を開始でき、担当者が限られていても導入しやすい
- 広範囲なデータソースに対応
FAQだけでなく、PDFやOfficeドキュメントからも必要な情報を引き出せる
- AIが最適な回答を生成
横断的な検索結果をもとに、AIが的確な回答を提供し、問い合わせ対応がスムーズになる
- 安心のセキュリティ
融資や預金などに関する個人情報や機密情報を安全に取り扱える
OfficeBotは、呉信用金庫だけでなく、伊予銀行や静岡県労働金庫、しののめ信用金庫など、複数の金融機関でも導入されています。本事例の詳しい内容は下記の資料をダウンロードしてください。
銀行業務における生成AI導入時の課題と対策
生成AIの導入は、業務の効率化に大きく貢献する一方で、データの品質管理やセキュリティ対策、規制対応など、慎重な運用が求められます。ここでは、導入時に直面する主な課題と、それを解決するための対策について詳しく解説します。
- データの品質を確保してAIの精度を高める
- セキュリティ体制を整備して機密情報を保護する
- 誤判断のリスクを低減して業務の信頼性を維持する
- 規制遵守と内部統制を徹底してリスク管理を強化する
データの品質を確保してAIの精度を高める
生成AIのパフォーマンスは、学習するデータの質に大きく依存します。 不正確なデータや古い情報、偏ったデータを使用すると、AIが誤った判断を下すリスクが高まるのです。
例えば、融資審査にAIを活用する場合、過去の偏ったデータを学習すると、特定の顧客層に対して不公平な判断をする可能性があります。また、古い経済データを基に市場予測をおこなうと、実態と異なる結果が導き出され、誤った意思決定につながることも考えられます。
こうしたリスクを回避し、AIの精度を向上させるには、データの品質管理が不可欠です。具体的には、以下の対策が求められます。
AIの精度を高めるための対策
- データのクリーニングを定期的に実施
誤情報や不要データを削除し、AIが適切な情報を学習できるよう管理する
- AIが利用するデータセットを常に最新状態に保つ
古いデータの影響を受けないよう、リアルタイムでの更新や定期的な見直しをおこなう
- AIの出力結果を監視し、バイアスを排除
人間が監視する仕組みを導入し、公平で正確な情報提供ができるようにする
セキュリティ体制を整備して機密情報を保護する
銀行業務では、顧客の個人情報や取引データを保護することが最優先事項です。 生成AIを導入する際には、データの漏えいや不正アクセスを防ぐための強固なセキュリティ対策が不可欠です。
例えば、外部からのサイバー攻撃によって機密情報が流出するリスクが考えられます。特に、「プロンプトインジェクション」と呼ばれる攻撃手法では、AIに不正な指示を与えることで、本来表示されるべきでない情報が漏えいする可能性もあります。
また、AIのチャット機能を活用する場合、誤って機密情報を含む回答を生成し、顧客に不適切な情報を提供してしまうリスクも懸念事項です。
こうしたセキュリティ上の課題を防ぐには、以下の対策を講じることが重要です。
セキュリティリスクを防ぐための対策
- データの匿名化や暗号化を実施
AIが顧客データを利用する際、個人情報を識別できないように処理し、情報漏洩を防ぐ
- アクセス制御の強化
AIシステムにアクセスできるユーザーを限定し、不正アクセスのリスクを最小限に抑える
- 定期的なセキュリティ監査の実施
システムの脆弱性を早期に発見・修正し、継続的にセキュリティ対策を強化する
誤判断のリスクを低減して業務の信頼性を維持する
生成AIは、膨大なデータをもとに高度な判断をおこなう一方で、誤ったアドバイスや判断をするリスクも伴います。 これは「ハルシネーション」と呼ばれ、実際には存在しない情報をAIがもっともらしく生成してしまう現象です。
例えば、AIが誤った金利情報を提供したことで顧客が混乱し、誤った金融判断をしてしまうケースや、融資審査でAIが不正確なデータをもとに安全な企業を「融資不可」と判断してしまうケースが考えられます。
このような誤判断が業務に影響を及ぼさないようにするためには、AIの結果をそのまま信用せず、人間が最終確認をおこなう仕組みが必要です。
誤判断のリスクを低減するための対策
- Human in the Loop(人間による監視)を導入
AIの出力結果を常に人間がチェックし、誤った情報が業務に影響を及ぼさないよう管理する
- 判断の根拠(エビデンス)の可視化
AIの判断結果だけでなく、なぜその判断に至ったのかを確認できる仕組みを整備する
- AIはあくまでサポートツールとして活用
AIの判断をそのまま業務に反映せず、最終決定は必ず人間がおこなう体制を徹底する
規制遵守と内部統制を徹底してリスク管理を強化する
金融機関では、法律や業界規制の遵守が必須です。 生成AIを導入する際も、法的適合性の確保や内部統制の強化が不可欠であり、AIの判断プロセスに対する説明責任(Explainability)も求められます。
例えば、規制当局(金融庁など)から「なぜその判断に至ったのか?」と問われた際に、AIの判断根拠を説明できなければ、業務停止命令を受けかねません。 また、AIが特定の顧客層に対して不公平な対応をおこなうと、差別や不当な取引とみなされ、法的問題に発展する可能性もあります。
このようなリスクを回避し、安全にAIを運用するためには、AIの透明性を確保し、規制対応を強化することが重要です。
規制遵守とリスク管理を強化するための対策
- AI活用時のガイドラインやポリシーを策定
AIの導入基準や倫理基準を明確にし、規制に沿った適正な運用を推進する
- Explainable AI(説明可能なAI)を導入し、判断プロセスを可視化
AIがどのデータをもとに判断したのかを明確にし、外部監査や規制対応に備える
- 社内の監査部門によるAI利用状況の定期チェック
AIの出力結果や運用状況を定期的に確認し、規制違反のリスクを事前に防ぐ
まとめ|業務改革を進めるなら生成AIの活用を検討しよう
銀行業界では、生成AIの導入が進み、文書作成の迅速化やデータ分析の高度化、社内問い合わせ対応の自動化など、多くの業務で活用されています。融資審査や規制対応の分野でも、AIの支援による業務効率化が実現しつつあります。
一方で、データの品質管理やセキュリティ対策、AIの誤判断を防ぐ仕組みの構築など、慎重な運用が求められる場面も少なくありません。成功事例を参考にしながら、自社の業務に適した形で生成AIを活用することが重要です。
業務効率化やAI活用を検討している方は、まずは適切なツール選びから始めてみてはいかがでしょうか。







