製薬業界における生成AI活用事例4選|業界の現状と課題解決に向けた取り組みを、生成AIの使いどころとともに解説

製薬業界は、長年の業界構造と長期的な医療費抑制の継続により、さまざまな課題を抱えています。中でも、新薬開発にコスト・時間がかかりすぎる点が大きな問題で、製薬業界全体のボトルネックになっていました。

こうした状況を打開するには、情報活用の質の向上と意思決定の迅速化が欠かせません。

有効な解決策として、いま注目を集めているのが生成AIです。

本記事では、製薬業界の現状と課題から、課題解決に向けた取り組みを解説します。生成AIの具体的な活用事例も紹介しますので、ぜひ最後までお読みください。

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製薬業界の現状と課題

まずは、日本の製薬業界を取り巻く現状と課題について整理しましょう。

  • 製薬業界の現状
  • 製薬業界の課題

製薬業界の現状

日本の製薬業界は、国内需要に依存した体制が長く続いてきたことや、長期的な医療費抑制が続いていることから、海外市場での競争力が低下しています。そのため、海外製品の導入や海外企業との提携において不利な立場に置かれている状況です。

こうした現状を受け、官民一体となって「創薬力強化」に向けた取り組みが進められています。

2025年6月には、総理官邸にて「第1回創薬力向上のための官民協議会」が開催され、国を挙げて「創薬力向上」を目指しています。

参考:創薬力向上のための官民協議会

製薬業界の課題

日本の製薬企業は、創薬力・国際展開・制度対応・ビジネスモデルなど、さまざまな面で乗り越えるべきハードルに直面しています。具体的には、以下のような問題点があるといわれています。

  • 海外に比べ、基礎研究・創薬技術・人材育成で劣っており、創薬力が弱い
  • 海外で承認された新薬が日本で承認されるまでに時間差がある「ドラッグ・ラグ」が発生し、収益機会を逃してしまう
  • 海外市場での日本製薬企業の存在感が薄く、提携・導入交渉で不利に働いている
  • 売上の多くが日本国内に集中しており、海外展開が遅れている企業が多い
  • 国内では継続的な薬価引き下げにより、収益性が低下傾向にある

さらに、業界全体で慢性的な予算不足や少子高齢化、海外への人材流出といった構造的な問題も指摘されています。こうした状況の打開に向け、生成AIの導入も含め、官民共に制度改革・技術投資・国際連携など多角的な取り組みをおこなっています。

生成AI導入を検討するには、業務における課題を明確にすることが重要です。まずはお気軽にご相談ください。

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ここまでに挙げた課題の解決に向けて、製薬業界はどのような取り組みをおこなっているのでしょうか。次の項目で詳しく解説します。

製薬業界における課題解決に向けた取り組み

ここからは、前章で紹介した製薬業界における課題の解決に向けた取り組みを紹介します。

  1. 創薬力強化
  2. ドラッグ・ラグ対策
  3. 海外展開
  4. ビジネスモデルの変革

1. 創薬力強化

日本の製薬業界は、基礎研究や創薬技術などに課題を抱えており、創薬力が弱いと指摘されています。この課題に対して近年注目されているのが、生成AIを活用した「AI創薬」です。

具体的には、化合物の設計やターゲット予測、毒性の評価、候補物質の探索といった業務にAIが用いられています。加えて、文献・データベースの解析や、研究論文や特許情報の要約・比較・抽出などにも役立てることが可能です。

人間による作業が研究全体のボトルネックになっていた業務を生成AIに任せることで、研究開発のスピードと精度の向上が見込まれています。

2. ドラッグ・ラグ対策

「ドラッグ・ラグ」とは、海外で承認された新薬が日本国内で承認されるまでに時間差が生じてしまう現象のことです。これにより、海外で利用可能な新薬を患者がすぐに使えないケースが発生し、企業にとっても収益機会の逸失につながっています。

この課題に対応するため、近年は生成AIを活用した治験プロセスの効率化が進められています。過去の治験データを学習させることで治験設計の合理化やリスク予測を支援できるほか、電子カルテなどのデータ解析を通じて適格患者の抽出・マッチングにも活用可能です。

さらに、時間を要する文書作成・翻訳・レビューを自動化することで、申請業務の効率化にもつながります。

3. 海外展開

日本の製薬企業は、海外市場での存在感が薄く、提携や導入交渉で不利に働くという課題を抱えています。また、売上の多くが日本国内に依存しており、海外展開が遅れている企業も少なくありません。

海外展開の強化を目指す取り組みとして、生成AIの活用が注目されています。

生成AIは大量の文書翻訳を短時間で処理できるため、契約書・申請書やプレゼン資料といったビジネス必須の文書作成を効率化し、言語の壁による機会損失を削減します。

加えて、海外市場の動向や薬価、規制情報などをリアルタイムで収集・要約することで、市場調査の迅速化も可能です。

4. ビジネスモデルの変革

薬価の継続的な引き下げにより、 製薬企業の収益性は低下傾向にあります。

この課題を解決するため、製薬業界では、ビジネスモデルの変革により、デジタル治療(DTx)やHaaSモデル、DXによるデータ活用と効率化を推進中です。実際に、以下のような形でデジタル技術を使った治療法やサービスが展開されています。

  • 個別治療プランや健康支援コンテンツの生成
  • 患者との対話支援、モニタリング
  • 治療レポートの自動作成や生活改善アドバイスの提供
  • 社内情報の共有による営業・MRへの支援迅速化、教育支援
  • 問い合わせ対応自動化で負担軽減
  • 社内文書作成を自動化し、業務を標準化・効率化

製薬業界では上記のような多角的な取り組みが進められていますが、製薬企業内部の各部署が抱える課題や解決方法は多岐にわたります。自社に最適な生成AIの活用方法を見つけるためには、製薬業界に限らず、他業界での先行事例も参考になります。

>>>課題や具体的な使用イメージを事例集で見る

製薬業界における生成AI活用事例4選

ここでは、実際に製薬業界で生成AIを活用している事例を紹介します。ひとつずつ解説しますので、参考にしてみてください。

  1. 創薬支援【インシリコ・メディシン社】
  2. 専門文書の読み解きや要約【アストラゼネカ株式会社】
  3. 高度な医療人材の育成【中外製薬株式会社】
  4. 知見の作業効率向上【医療医薬メーカー】

事例1.創薬支援【インシリコ・メディシン社】

1つ目は、創薬の研究・開発において、従来より圧倒的に短期間・低コストで新薬開発を実現したインシリコ・メディシン社の事例を紹介します。

従来の製薬業界では、実験に膨大なデータを必要とするため、創薬には莫大な時間・コストがかかっていました。新薬開発には1つあたり約10〜15年・約3,500億円が必要とされているデータもあります。

その結果、投資収益率(ROI)が極めて低い傾向にあり、製薬業界全体の大きなハードルとなっていました。

こうした業界全体の制約の中、同社は独自に開発したAI創薬プラットフォームを活用し、新薬候補を効率的に発見しました。候補物質の設計に生成AIを導入し、わずか18ヶ月・約260万ドルでFDAから臨床試験開始の承認を受けています。

さらに、2025年には新薬候補が「レントセルチブ」という国際一般名を与えられ、潜在的な抗線維化・抗炎症効果が裏付けられました。これにより資金調達に成功した同社は、調達した資金をAIモデルの改良や、候補薬の開発強化に充てるとしており、創薬スピードのさらなる向上を目指しています。

参考:ヘルスケア領域における生成AI 医薬品開発、患者対応に高い期待 -BCG Japan

事例2.専門文書の読み解きや要約の効率向上【アストラゼネカ株式会社】

2つ目は、営業・マーケティング部門において、専門文書の読み解きや要約が大幅にスピードアップしたアストラゼネカ株式会社の事例を紹介します。

製薬企業の営業・マーケティング部門では、業務遂行のため医療系論文や専門文書を正確に理解しなければなりません。科学的知識や法令、ガイドラインの理解も必須です。

加えて、新規疾患領域や最新テクノロジーを把握するため、常に最新論文を読み解く必要があり、知識のアップデートには大きな負担が伴います。

同社は生成AI(Amazon Kendra)を導入し、専門文書の読み解きや要約にかかる時間を大幅に削減しました。最新医療に関する情報を、効率的にキャッチアップできる体制を整えています。

参考:AIで変革する製薬業界の最前線 全社で生成AIを活用へ アストラゼネカに見るデータ活用戦略の「未来」 – 日経バイオテク Special

事例3.高度な医療人材の育成【中外製薬株式会社】

3つ目は、MRの医師への対応力を強化した中外製薬株式会社の事例を紹介します。

医療従事者に対し、自社製品の効果や副作用、使用方法などを説明するMRの業務は、医師からの質問に的確に答える高度な経験と専門性が必要です。もちろん、人命に関わるため、誤回答は許されません。

中外製薬では生成AIを使った独自のチャットサービス「Chugai AI Assistant」を活用し、MRが医師との会話をシミュレーションできる環境を構築しました。AIとのトレーニングを繰り返し、MRの専門知識と対応力が向上することを期待されています。

参考:中外製薬: RAG を用いた文書検索や人財育成、メディカル ライティングなどに生成 AI を活用し、業務効率化とさらなる価値創造を推進

事例4.治験の作業効率向上【医療医薬メーカー】

4つ目は、生成AIにより医療医薬メーカーの治験の作業効率が向上した事例を紹介します。

製薬業界では治験をおこなう際に、過去のデータや規定を確認する必要があります。しかし、同医療医薬メーカーでは数多くの治験を実施しているため、膨大なデータから必要な情報を探すのが困難な状況でした。また、現場では、資料の検索に時間がかかっており、詳しい担当者への質問が集中する状況が発生しています。

加えて、業務に必要な書類が多く、テンプレートの検索に手間がかかるという悩みもありました。似ている書類や表形式が多いため、生成AIを活用するにも高い精度が求められていたのです。

そこで同社は、登録データを高い精度で見分けられる生成AIチャットボット「OfficeBot」を導入。膨大な資料から、ピンポイントで必要な情報を取り出せるようになり、現場社員の治験の作業効率が大幅に向上しました。結果として、本来時間をかけるべき業務に専念できる環境を整えられました。

RAGツールを活用したチャットボット「OfficeBot」は、営業や開発などさまざまな職務分野で課題解決に活用できます。業界が違っても共通するニーズは多く、他業種の導入事例も課題解決の指針として参考にしてみてください。

より詳しく知りたい方は、業界別の導入事例集がおすすめです。

製薬業界で生成AIを利用する際の注意点と対策

これまで紹介してきたように、製薬業界でも生成AIの活用は広がっています。ただし、利便性の裏側には注意すべき点も存在します。ここでは、その留意点と対策をチェックしておきましょう。

  • 情報漏えいの可能性
  • ハルシネーションの発生リスク
  • 投資コストの増大

情報漏えいの可能性

製薬業界では、医療データや個人情報を扱うため、厳格なセキュリティ対策が不可欠です。中でも、創薬研究の内容や臨床試験データなどの機密情報が漏えいすると、知的財産の流出や競合他社に先を越される事態につながりかねません。

他業界に比べ、情報漏えいによる損害が大きいため、クラウド利用時のリスクや社外データの取り扱いには十分な注意が必要です。

情報漏えいの発生を防ぐために、企業機密をAIに入力しないよう徹底することが重要です。データとして登録が必要な患者の個人情報・診断情報などは、個人が特定できないよう処理しておきましょう。運用前に利用ルールを策定し、利用者研修などで意識向上を図ることも大切です。

【合わせて読みたい】
企業担当者必見!生成AIのセキュリティリスクと対策を徹底解説

ハルシネーションの発生リスク

生成AIは、学習データの誤りや情報の古さなどが原因で、事実と異なる内容を生成してしまう「ハルシネーション」が発生する可能性があります。特に、複雑な情報を取り扱う製薬業界では、このリスクが高いといえます。

製薬企業による誤情報の発信は、処方ミスや重篤な副作用を招き、消費者の健康・安全にかかわる可能性があるため、十分な注意が必要です。さらに、承認申請にかかわる重要文書で誤情報を生成してしまうと、承認遅延や却下のリスクが高まります。

社内で生成AIを使う際は、出力結果をそのまま採用せず、検証を徹底しましょう。薬剤師や医師など有資格者による検証プロセスを組み込み、人間によるダブルチェックも必ず実施します。

そもそも、ハルシネーションの発生を抑える対策として、RAG技術を活用し、学習させる情報を限定する方法も有効といえます。

【合わせて読みたい】
生成AIのハルシネーションはなぜ発生する?原因と即実践できる対策を解説

投資コストの増大

生成AIの活用には、初期導入費用やサーバー・クラウド使用料などのランニングコストに加え、既存の社内システムとの連携させるための追加開発やカスタマイズも必要です。

また、薬事や臨床などの専門知識とAI技術の両方に精通した人材は希少なため、採用や社内教育・研修にもコストがかかります。あわせて、機密性の高い臨床データや、知的財産保護のための追加投資も欠かせません。

しかし、導入直後からすぐに成果が出るとは限らず、「投資したのに十分に活用できない」期間が発生する可能性もあります。

おすすめは、まずは一部業務で導入する「スモールスタート」です。

効果を検証し、小規模な業務で得られた成果をもとに段階的に大規模導入へ移行することで、コストとリスクを最小化できます。

まとめ|まずは社内検索やナレッジ共有に生成AIの導入を

製薬業界では、新薬の研究・開発の難易度が高く、長期化・高コストが大きな課題となっています。こうした状況下で研究者をサポートするためには、創薬領域のDX化が不可欠です。

生成AIの活用方法は多岐にわたり、たとえば以下のような分野で効果が期待できます。

  • 社内検索・ナレッジ共有
  • 創薬支援
  • 顧客対応サポート

ただし、導入時には情報漏えいやハルシネーションなどのリスクを理解しておくことが重要です。

本記事で紹介した活用ポイントをふまえ、まずはスモールステップでの導入が成功の鍵といえます。たとえばチャットボットツール「OfficeBot」は、社内検索やナレッジ共有の効率化に有効で、創薬支援や顧客対応など大規模な活用に進む前の第一歩としておすすめできます。

詳しくは、以下の資料をダウンロードの上ご覧いただき、導入をご検討ください。

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